南会津? 神籠ヶ岳、烏帽子岳 2010年3月14日

所要時間 車−−尾根取付き−−反射板−−神籠ヶ岳−−桧和田峠−−烏帽子岳−−林道−−車


 神籠ヶ岳の名を耳にしたことのある人はいるかもしれない。何とか名山に入っているかどうか知らないが、1等三角点の山であるからだ。その昔、まだ薮の何たるかを知らずに山下オジサン一行とつるんで山登りをしていた頃、晩秋に神籠ヶ岳に向かったのだが、そのときは東側から攻めたが標高が上がると笹薮が続き、途中で断念した経緯がある。その当時、行き先は山下オジサンが決めていたので私は神籠ヶ岳については何も知らなかったので挑戦が無謀なのかどうかも分からなかったが、今ならネットで調べることも可能だろう(当時は「パソコン通信」はあったがインターネットは一般的ではなかった)。今回再計画するにあたってネットで調べても良かったのだが、どうせ道は無いだろうから残雪期に適当に登るなら自分なりに歩きやすい尾根を決めて登った方が自分にあっているだろう。この規模の山ならさほど気合は必要としない。

 地形図を見ると最短は南東から攻める方法だろうが、神籠ヶ岳の北側には烏帽子岳があり、せっかくだからここにも登って稼ぎたい。そうなると大内集落を基点に周遊するのがベストだろう。たぶん除雪は集落までだろうから、県道近くに適当に駐車して歩くことになりそうだ。神籠ヶ岳から東に伸びる尾根が1031.8m三角点の先で北東に折れ曲がった末端からとりついて先に神籠ヶ岳に登り、主稜線を北上して桧和田峠を経由して烏帽子岳に至り、主稜線を進んで1054m峰でそのまま南東に枝尾根を下っていけば、沢沿いの林道に出られる。

 天気予報では土曜日は本州上を寒冷前線が通過し、日本海側は雨や雪で太平洋側も関東を除いて曇りや雨だという。出かけるか悩んだが日本海側から離れた南会津なら少しはマシな天気だろうと決行、外環→東北道と走って那須高原SAで仮眠。翌朝、白河ICで降りてまだ新しい甲子トンネルで下郷へと抜ける。この道ができたおかげで南会津のアクセスが良くなった。凍結した路面に注意しながら大内へと到着、しかし集落は一般車進入禁止との看板で手前の舗装道路を上がっていく。どこまで除雪されているかと思ったら地形図で道幅が狭くなっているところまでやってあるらしかったが、途中から不完全な除雪となって私の車ではスタックの可能性も出てきたので戻り、かなり下ったところで除雪の幅が広がったところに駐車、朝飯を食って出発した。この時点では予報に反して快晴、このまま晴れが続くのではと思われるほどだった。

除雪された林道が続くが駐車余地が無く手前に置いた 林道終点付近の上水道施設
ここから尾根に乗る 尾根上に出る

 林道を歩いて除雪終点まで行くとビッグホーン?の裏手の雪面にテントが張られていた。こんなところから出発するのは神籠ヶ岳くらいしかない。どうやら同好の士らしい。たぶん桧和田峠経由で登るだろうから私とは途中ですれ違うことになりそうだ。その先に浄水場施設があって林道はなおも続いていたが登りとなって沢が無い。どうも途中で知らない間に渡ってしまった様だ。神籠ヶ岳に登るには右岸側を登らなければならないので行きすぎで林道を逆戻り。下っていくと除雪の雪に隠れて橋が全く分からなくなっていたがちゃんと沢を渡る箇所があった。そこから斜面に取り付いたがスカスカの雪で足元が崩れ、ピッケルも動員してどうにか尾根に上がった。ちゃんと末端から取り付いた方がよかった。

ここから急斜面が始まる たぶん林業用の目印
上部は自然林が混じる 傾斜が緩む

 尾根に出ると杉の植林帯だが一面の積雪でまだ花粉は飛んでいない。幸い、尾根上に出るとスカ雪から少し締りのある雪質に変化し、スノーシュー装着で僅かな沈みに収まるようになる。いきなり猛烈な傾斜をよじ登ることになったが、登りにはめっぽう強いスノーシューの威力で一直線に登っていく。たぶんスノーシューを履いたままでは下れない傾斜だろう。高度が上がると植林が終わって猥雑な自然林となるが薮状態ではなく、隙間を縫ってなおも登るとやっと傾斜が緩んで810m肩に到着して進路は左に変わる。ここからはまともな尾根地形となって、延々と尾根を辿っていけば最後は山頂に到着できる。

二岐山 大内集落を見下ろす
既に雪庇が登場 でも笹が姿を見えるところも

 850mを越えると再び傾斜が出てきてまとまった登りとなる。雪庇も登場して雪山らしくなってくるが、西斜面の積雪は10cm程度のところも多く地面が顔を出している場所もあった。そこには笹は見られず、標高がある程度上がるまでは笹は登場しないらしい。これなら無雪期のほうが楽に歩けるが山頂が近づくと激薮なんだろうなぁ。前回はどのくらいの標高で撤退したのかも不明だ。この付近では目印皆無だ。

 雪庇の雪は高度が上がるに従って大きくなってくるが、徐々に深くなる新雪は全く締りが無く気温が高くて重く湿った雪でラッセルがつらい。それよりも西斜面に近いほうが積雪が少なくて楽に歩けるので、木が邪魔だが樹林の中を歩くようにした。雪庇の先端の方に汚れた雪が顔を出している場所は下層の古い雪が表面にでているのだが、そこは良く締まって歩きやすかったので新雪だけがスカスカらしい。こいつが溶ければ締まった雪に変わるだろうが1,2週間必要か。

1020m肩の反射板 三角点へ向かう
三角点で目印出現 熊棚も出現
三角点先で目印が増える この他にも黄色テープ、古いペイントもあった

 1031.8m三角点手前の1020m肩に到着すると、3週間前の小黒檜山のように電波反射板が立っていた。ここは展望がよく男鹿山塊から二股山の山並みが連なっていた。この頃には遠くの東の空は明るいのだが頭上は雲に覆われて、たまに隙間から日差しが差し込む程度になっていた。三角点も肩にあり一面の雪原の今ではその存在は確認不能だった。ここまで上がってくると別の尾根の利用者か、数種類の目印が認められた。その目印を付けた連中は皆ベテランらしく、山頂まで目印の数は非常に少なかった。今日のような雪質なら足跡がはっきり残るので目印の必要性は皆無だが。その前に今日の計画は周遊なのでそもそも目印を残す必要が無い。ここまで来るとブナの純林が広がって関東では味わえないいい雰囲気だ。

赤ペイントが低い位置にあった 木に飲み込まれたワイアー
最後の傾斜地帯 歩いてきた尾根を振り返る

 なだらかな尾根が終われば最後のまとまった登りが始まる。雪が重く新雪ラッセルが続き、かなり体力を消耗してしまった。2週連続で週末の天気が悪く山の間隔が空いてしまったのも要因かもしれない。あまり体力を使いすぎると烏帽子への登りが厳しくなるので歩幅を狭めてゆっくりと登るようにする。小動物の足跡が続いているがこいつの上は沈みが少なく、できるだけ足跡を辿るようにする。また、きれいな色の新雪はできるだけ避けて汚い雪を繋げるようにもする。

傾斜が緩む ここだけ笹が出ていた
山頂直下で尾根が広がる もうすぐ山頂

 1270mを越えると傾斜が緩み、ブナの広い尾根を緩やかに登っていく。もしガスられたら下りは厄介だろう。天候は徐々に悪化してたまに雪や雨が落ちてきた。この時期のこの場所、標高で雨なのだから今日は暖かい。気温はずっと+5〜6℃を示したままだから雪がスカスカなのもしょうがない。標高が上がっても締まりのない重い雪が連続し、この距離、時間にしてもう疲労がかなり溜まってきた。

雪庇に覆われた神籠ヶ岳山頂 神籠ヶ岳から見た南へと続く稜線

 最後に傾斜が少し出た尾根を登りきると小さな雪庇を越えて神籠ヶ岳山頂に到着した。地面は何m下にあるのか不明だが、雪庇に覆われているので3mはありそうだ。埋もれた木にいくつか目印が下がっており、その木に赤テープを巻いた。かなり疲れたので風下側で休憩していると雨が強くなってきてゴアを引っ張り出した。残念ながら天気予報どおりになってしまった。雨よりもここから峠まで下る間に雲が下りてきて視界が無くなるのが一番怖いが、今のところその様子はない。ただ、すでに遠望は利かず、二岐山や那須の山々は見えなくなっていた。標高の高い山は雲がかかりだしており、時間がたてばここまで降りてくるかもしれない。

 天気がイマイチで烏帽子岳まで足を延ばすか悩むところだが、どのみち下りは桧和田峠まではルートは同じだから行くしかない。この先しばらくはなだらかな尾根が続くので視界が効かなくなるとルートを見失いやすいし、雨の中で長時間休憩するのもイヤなので少し休憩してから出発した。

稜線を北上する 崩壊した小屋
唯一の目印。これ以外は見なかった 尾根が明瞭になる
登りに使った尾根

 ブナの林立する広い稜線を緩やかに北上し、1350m付近で尾根は右に緩やかに曲がるが、ここは適当に歩いていても自然とその方向に引き込まれる地形なので心配は無いだろう。1250m付近までは尾根が広くてブナが散在する程度でまあまあ見通しが良いのだが、そこから標高が下がって尾根が狭まってはっきりすると同時に樹林の密度が上がって、隙間から周囲の様子を窺うようになる。まあ、尾根が明瞭なのでしばらくは外すことはなさそうだが。山頂で休憩中には、下りの尾根にはある程度目印があるかと思ったのだが、歩いてみたらほぼ皆無だった。通常、神籠ヶ岳に登るときはどんなルートで登るのだろうか?

北西に針路を変え尾根に乗りなおす 樹林の切れ目から烏帽子岳が見えた
この尾根上には境界標識あり 峠が近づくと雪が減ってくる

 雨が降っているので頻繁に地図を引っ張り出すわけにもいかず、1181m標高点でみかけの主尾根を離れて左に下る必要があるのを知らずに少しの間下ってしまったが、まだガスはここまで下がっていなくて近くは見通すことができ、桧和田峠が左に見えたので地形図を確認し、方向を修正して正しい尾根に乗った。さらに下って1000mくらいまで来ると雪の量は減って地面が出ている場所もあるが、笹は見当たらないのでもっと標高が高いところしか笹は無いようだ。

桧和田峠 下ってきた尾根

 西斜面が植林帯になると桧和田峠は近く、標識も何も無い峠に出た。東側は明るい自然林、西側は暗い植林帯だった。雪が積もっているので地形図の破線が実際に存在するのかは不明だ。雪質も天候も悪いことだし、このまま東に下って烏帽子岳を割愛してもいいのだが、僅か標高差150mを登れば烏帽子岳に到着するので当初計画どおり足を延ばすことにした。

 出だしはいきなりの急な登りで、南斜面だが尾根上と違って全面を雪が覆っていた。スノーシューのヒールリフターを立ててジグザグに高度を稼ぐ南斜面で新雪は解けてしまったようで歩きやすい区間が続いた。しかし1028m峰てっぺんが近づいて傾斜が緩むと再び重く沈む雪の連続となり足が重くなる。振り返ると神籠ヶ岳山頂はまだ雲の下だがかなり煙っていたのでまもなく雲に沈むだろう。

 なだらかな尾根になってからも軟雪に苦労させられ、1000m肩で進路を右に変える。逆周りのルートをとる場合、直進しないよう要注意箇所だ。尾根上にはうねった雪庇が続き、これがまた一段と軟雪が深く、スノーシューでも脛まで潜って引き抜くのが大変だ。尾根の北側は少し笹が顔を出しているがそれだけ積雪が浅いということで、木は邪魔だが少し足が軽くなるので尾根てっぺんより北側にずれて歩いていく。最後はかなり疲れたが、傾斜が緩んでどうにか烏帽子岳山頂に到着した。

 神籠ヶ岳よりは登る人は少ないだろうが皆無ということはないだろうと思っていたが、目印は2個だった。こんなマイナーな山に足を伸ばす人は少ないに違いないから、2個もあったのは多いというべきか。重雪のラッセルでさすがに疲労困憊し、雨粒が落ちてきているが山頂で休憩。ザックの中が濡れてしまうので食い物や水の出し入れは手早く行った。今の時期は落葉しているので樹林の中でも全く雨避けにはならない。大降りではないのでゴアの上着だけでしのげるが、長時間休むようなシチュエーションではなく、ザックを背負った。雨で木も濡れていることだし烏帽子岳では落書きは残さなかった。

 さあ、やっと下山だ。1054m峰までは僅かに登りがあるが、その後は下りが続くので軟雪の苦労ともおさらばできるだろう。既に神籠ヶ岳は雲に沈んで見えなくなり、天候は確実に悪化しているようだ。それでもまだこの標高は視界は良好で、これから歩く尾根も落葉樹林の先に見えているので大丈夫だろう。

 なだらかな尾根の水平移動でも重い雪のラッセルが堪える。左に太い尾根が分岐しここより高いピークがあるがそちらは主尾根ではなくそのまま直進、左に進路を振ってだだっ広い1054m峰に到着。ここで主尾根は左に曲がるようだが地形がなだらかなのでイマイチ不明瞭だ。南東に下る尾根もピーク上からは見えないが、少し南に移動して下り始める場所からは尾根がはっきりと分かって一安心。あとは948.6m三角点までは一直線に下っていけばいい。その先もまっすぐ下ってもいいのだが、三角点の先で左に分岐する尾根に乗り換えたほうがより林道に近い場所に出ることができるので(大差は無いけど)途中でルート変更をする予定だ。

 残雪と落葉樹林の同じような風景が続いて高度計が無いと現在位置の把握が難しい。何も考えずに歩いていて傾斜が緩んだので高度計を見ると941m、危ない危ない、分岐尾根入口を通過してしまうところだった。この付近で雪に埋もれて傾いたマンサクの木に花が咲いていた。

 分岐尾根に入っても同じような風景が続き、淡々と下っていく。下部は少し傾斜が急になるかと思ったがそんなことはなく、スノーシューを履いたまま尾根末端に出た。尾根が終わると薄暗い杉の植林帯に突入、周囲の展望が見えないが林道終点は左斜めの方だろうと適当に進んで行くと桧和田峠から流れる沢に出た。もっと左に進路を取るべきだったか。沢の左岸に沿って下ろうと思ったら最初から支流が流れ込んで行く手を分断していたが、幅は2m程度なのでスノーシューを履いたまま飛び越えられた。

 急斜面をトラバースして再び平坦地に出るとすぐに雪に埋もれた林道に出た。あとは林道を辿ればいいが、正直に林道どおり歩くと少し遠回りになるため適当に右にショートカット、ビッグホーンが止まっていた場所より少し下に出たが、車は既に消えていた。そういえばその主とは会わなかったし、途中で足跡も無かったので悪天の予報に従って山行を取りやめたのだろうか。そういえば林道に出てからは雨脚が強まり、傘が欲しい程度になってきた。もうスノーシューの出番は無いので手にぶら下げ、雨に濡れながら車に戻った。

 

2000m未満山行記録リストに戻る

 

ホームページトップに戻る